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よく聞かれます、『どうして酒造りを仕事にしたのですか？』。 私が選んだわけではありません、酒造りが私を選んでくれたのだと思っています。だって渡米して直ぐに仕事を失って、ここに住むためにはこの仕事しかなかっただけです。一体何の人生修行なのか今でもわかりません。 ところが思いの外、これが Only one になれる唯一の仕事でした。おそらく大学院の学位を持って、しかもスペイン語で酒を仕込む杜氏さんなんて、世界にそうたくさんいやしない。まして異国の酒造りだなんて簡単じゃないけど、母国じゃ味わえない幸福感ってのがあるんザマス。 人生は思ってもいないことや想像もしないところに幸運があるのかも知れません。

優しい心を持たないと、酒は造れません。 まぁ、人を喜ばせる飲み物ですから、造り手は当然HAPPYでなければなりません。 酒の出来は造り手の心を写す鏡なのであります。

酒蔵ちゅうもんは年中無休でありまして、それぞれ蔵人はシフトによって仕事をしてるもんです。 なので全員が揃う時は滅多にありやせん。 しかし本日は全員顔を揃えやした、それなら本日のランチは BBQと、いきましょう！ 実は、蔵人が普段から空き缶やらダンボール箱、はてま た蔵で不必要なメタル類をリサイクルへ出し得たお金で催 されているのであります。ドラム缶の上にパレット乗せただけのテー ブル、中々ワイルドですわ。 蔵は綺麗になるし皆は大喜び、肉はうまいし、最高! さーもっとお片付けして、また皆でBBQ食べようぜ! こうやって士気を高めるのも、指揮官の大切なお仕事なのであります、アメリカの蔵人はやっぱり肉が好きなのでありやす。

どうやって同じ味を毎回造り続けられるのですか？ と、先日GOODな質問をいただきました。 それは本当のような嘘のような、とってもお腹が痛くなるようなナイスな質問です。 なぜなら。。。 仕込むタンクごとに、味は毎回違うから。 自分が、『これだっ！』なんて味は、一年で一、二本くらいです。 ほかの百数十本は全て納得する味ではないんですから、凄いですよね。。 ですから、納得のいかない味が、毎回同じ味ということとなり、それが皆さんに支持され、商売が成り立っているんですね。 酒造りに入学はあっても、卒業がないとはこのことで、なんとも奥の深い世界に足を踏み入れてしまったものです。

アーカンソー州からのお客さん、それはBenさん！皆さん良くご存知の彼、初めて会ったのは去年、修行中の南部美人の蔵での出会い、一目会った瞬間に彼の感性の豊かさをバンバン感じ意気投合したのでした。始めて飲んだ日本の地酒に感動し、岩手の南部美人で2年も修行するのですから、中々のガッツの持ち主です。ちなみに南部美人の社長である久慈浩介君は、私と同級生。そう農大醸造学科の同志、なんとも縁の深い出会いなのです。 久々の再会はもちろん南部美人の心白で乾杯！山田錦で造られるこの酒、旨い。日本での話を聞いていると、Benさん本当に色々なものを食べて来たようだ。特に驚いたのは牛タン、基本アメリカ人は食べないものですが、彼は大好物だといいます。やはり酒は文化だから、日本の食文化を理解せずして酒は造れません。そこを押さえている彼の感性は本当に素晴らしいの一言です。そんな彼の夢はもちろん、アメリカでSAKEを造る事！ 日本通の彼がアメリカで造りたいSAKEはなんと、ステーキと一緒に飲めるSAKE、ザリガニ料理と一緒に飲めるSAKEだ！それだよ！！！その土地の文化でSAKEを造る、それが本当のSAKEの姿なのだ。 彼の地元のアーカンソー州は美味しいステーキもあり、ザリガニ料理もあり、そしてなんと酒米の王様、山田錦が作られている。地元の米、水、人で造られるこのSAKE、きっと愛されるものが出来上がるだろうな。そして私の知らないSAKEがそこにはあるのだ。その時は私も造りに行くからね、応援しているよ！ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ーBRUCEー